関西空港で、知られざる外国人の入国審査を徹底追跡しました。すると、退去命令、規制薬物など様々なトラブルを抱えた外国人から日本の安全を水際で防いでいました。
■引き渡されたインド人男性 一体何を?
西日本最大の“空の玄関口”関西空港に、日本の安全を守るスペシャリストがいます。
“入管”職員:「6番ブースを日本人ブース、7番ブースをリエントリー表示お願いします」
「大阪出入国在留管理局 関西空港支局」、通称“入管”の事務室です。
今回、彼らの知られざる活動を取材することができました。
外国人を引き渡したいと連絡が入りました。入管職員が向かいます。連絡は入国審査を行うブースからでした。
関西空港では北・南ウイング合わせて、64ブースを設置。不審な人物が入国しないか、確認を怠りません。
職員:「ボーディングパス?」
男性:「あります」
引き渡されたのは、タイのバンコクから来たインド人男性。この後、男性が国外退去を命じられることになろうとは思いもしませんでした。
「セカンダリ審査室」と呼ばれる部屋で、慎重に審査を行います。
職員:「ホテルの予約証明書はありますか?」
インド人男性:「コレですか?」
職員:「ホテルの予約です」
インド人男性:「ビザ?」
職員:「いいえ、ホテルです」
インド人男性:「これが私の会社だよ」
スマートフォンの修理・販売をしているという男性。日本へは、観光目的で来たといいます。
職員:「ひとりで6日間、旅をすると」
男性は旅行の予定表を持っていました。同意を得てコピーします。この予定表を確認しながら、改めて男性の活動内容を聴き取ります。
就労ビザを得ずに日本で働いたり、オーバーステイなどの不法滞在を防ぐため、こうした審査が必要なのです。
職員:「一言で言うと、説明できていない。旅行日程が本来の予定表と食い違っている。具体的なお寺の名前とか言えなかったり、具体的にどこに行く?と聞いても、名前が出てこない」
■不法就労の可能性も…“国外退去”の一部始終
さらに、日本まで来た経緯も聴き取りしたところ、“ある事実”が分かりました。
職員:「ドバイに仕事で行って、その後タイに行っている」
インド人男性は、まずインドからアラブ首長国連邦のドバイへ飛び、仕事をしたといいます。その後タイでは観光旅行をし、日本でも観光するだけだというのです。
職員:「インタビュー、アナザールーム」
さらに詳しい話を聞くため別室へ。この部屋の中では、母国語の通訳を通じて、「特別審理官」と呼ばれる職員が聴き取りを行います。
特別審理官:「予定表とあなたの目的地が違いますが、どなたが予定表を作ったんですか?」
インド人男性:「タイの旅行社に作ってもらいました」
特別審理官:「とはいえ、なぜあなたは旅行先を答えられないんですか?」
インド人男性:「…」
数時間に及び聴き取りをしても、答えがあいまいな男性。日本で仕事をする可能性も否定できません。
職員:「審査中だったインドの男性ですが、送り返し決定になりました」
“入管”が出した結論は“退去命令”です。
大阪出入国在留管理局関西空港支局 第四審査部門 佐藤史郎首席審査官:「入管法の7条1項2号に適合しないという判断で、あすの出国便で戻ることになりました」
男性は、入国目的を偽っている可能性が高いと判断され国外退去を命じられました。
インド人男性:「いますぐ移動かい?」
“退去命令”を出された人は、速やかに日本から去らなければなりません。男性は翌朝、来た時と同じ航路で、タイのバンコクに戻されました。
■“ブラックリスト”登録された人物の可能性が…
世界17カ国、46都市から週に948便が運航する「関西空港」。一日およそ7万人が利用し、毎日およそ2万人もの外国人が入国審査を受けます。
ブースではまず、外国人入国者から指紋と顔写真の提供を受け、テロリストなどの情報と照合します。
さらに「パスポート」「ビザ」「外国人入国記録カード」を確認して審査。不正な目的で日本に入国しようとする人物を水際で防いでいます。
またもや、入国審査ブースから外国人引き渡しの要請です。入国審査で何か問題があったようです。
職員:「何人で来ました?ひとりですか?」
女性:「ひとりです」
アジアの国から来た30代女性。一体なぜ、審査に引っ掛かったのでしょうか?
大阪出入国在留管理局関西空港支局 第二審査部門 落合純一首席審査官:「“ブラックリスト”の類似人にヒット。現在、審査をしております」
“ブラックリスト”とは、テロリストや犯罪者などのデータベースを指します。
女性は、その“ブラックリスト”に登録されている人物かもしれないというのです。
突然のことに戸惑いを隠せない様子の女性。“入管”職員が“ブラックリスト”の情報を詳しく確認していきます。すると、思いもよらぬ事実が判明しました。
職員:「同じ名前の人が出た」
職員:「あ、本当だ」
“ブラックリスト”の人物が出てきましたが…。
職員:「顔画像ですけど、おそらく別人」「顔自体も別人」「生年月日も違います」「別人やね」
実は、女性は、ブラックリストに登録された人物と同姓同名だったため、ブースでの審査に引っ掛かってしまったのです。
慎重を要する入国審査では、こうした細かい確認作業が必要になるといいます。
女性:「ここから出ていいですか?」
職員:「大丈夫です」
“ブラックリスト”の人物とは別人であることが判明し、女性はホッとした様子でその場を後にしました。
■“疑惑のパスポート”前代未聞の真相
またも外国人の引き渡しです。ヨーロッパから観光旅行で来たという4人家族。40代女性と2人の子ども、そして女性の母親です。
実は40代女性のパスポートに、ある疑惑が持ち上がりました。
落合首席審査官:「盗難失効旅券ということで」
なんと「盗難」もしくは「紛失」で、届けが出されているパスポートかもしれないというのです。なぜ、女性がそんなものを?
職員:「何それ?」「わからん」「え?」
女性のパスポートには、不審な点がありました。
職員:「発給日(2023年)3月14日」「期限が2024年10月28日」
発給からおよそ1年8カ月で期限が切れる、不自然なパスポート。これは一体?
職員:「英語できないって言うので」
職員:「ポケトーク(翻訳機)なり、通訳を使ってやるしかないだろう」
別室に移動し、母国語の通訳を通じて話を聞いてみると、事情が分かりました。
ヨーロッパから来た女性:「実は以前、引っ越しの際にパスポートをなくしたみたいで紛失届を出しました。手元のパスポートは今年手続きして、再発給されたものです」
聞けば、手続きの際、子どものパスポートも申請したといいます。そこで混乱が生じたのでしょうか?
誤って、以前のパスポート情報が使われたため、不思議なパスポートが発給されてしまったようです。
職員:「本人だけの話で(入国許可)するワケにもいかない」「とりあえず大使館に確認」
在日大使館に連絡し、今後の対応について協議が行われました。
落合首席審査官:「大使館で“緊急旅券”を発給されるということで、“仮上陸許可”を出しました」
その後、在日大使館は緊急パスポートを発給。女性は改めて手続きを行い、正式に上陸許可が出されました。
■乗客の薬に持ち込み規制成分が?
午後2時、到着便が集中する時間帯です。空港会社の職員が駆け込んできました。
空港会社の職員:「(乗客の)持っている薬が、規制薬物に該当するか確認を」
乗客が所持する薬に、大麻など持ち込みが規制されている成分が含まれている可能性があります。
落合首席審査官:「上陸許可できない、そのままだと」
職員:「じゃあ止めます」
落合首席審査官:「止めて」
実は、ある乗客が「日本で規制されている品を所持している」という項目にチェックを付けたため、このような事態になったのです。関係機関に問い合わせます。
薬を持ち込んだのは70代のアメリカ人女性。アメリカでは許可されている常備薬だといいます。果たして“入管”の判断は?
落合首席審査官:「関係機関に照会したところ、上陸拒否事由に該当する薬物ではないと確認できましたので、短期滞在90日で上陸許可をいたしました」
日本の安全を守る空港のスペシャリストたち。訪日外国人が増加するなか、気の抜けない日々が続いています。
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